2026/8/29
Hi-Light R8.1・R0・RA1の違い|チタンロード上位モデルと3Dプリント
チタンフレームの価格は、どこで決まるのか。
Hi-Lightのロードラインナップは、フレームセット13万8000円のR6から、110万円のRA1まで並んでいます。この8倍の開きを作っているのは、素材の等級ではありません。フレームのどこまでを3Dプリントで作り、どこに溶接を残しているか——ほぼその一点です。
この記事では、エントリー2モデル(R6・R7.3)より上のグレード、リムブレーキのR8C、そしてR8.1・R0・R0 Pro・RA1までを、価格差の中身とあわせて解説します。R6とR7.3の比較はロード編①をご覧ください。
Hi-Lightというメーカーについて
Hi-Lightはチタン専業のフレームメーカーです。自社ブランドの完成品を出しながら、他社へのOEM供給も行っています。
規模感を示す数字がひとつあります。溶接工が約30人在籍していること。そして、熟練した溶接工でもチタンフレームは1日2本程度が限界とされていること。単純計算で1日60本が、溶接だけに頼った場合の生産上限になります。
OEMを含めた供給量を考えると、この60本という数字がそのままボトルネックになる。ここが、Hi-Lightが3Dプリントへ舵を切った出発点です。
3Dプリントで、チタンフレームの何が変わるのか
上位モデルの価格差を理解するには、先にこの話を通しておく必要があります。
1. 材料が減る
溶接は、接合部に金属を「盛る」工程です。盛るためには余分な肉厚を残しておく必要があり、その分だけ材料を余計に使います。3Dプリントは必要な形をそのまま出力するため、この余剰がありません。
2. 肉厚を自由に設計できる
これが最も大きい変化です。
カーボンフレームは、引張強度の異なる繊維を組み合わせ、積層の向きと枚数で剛性を場所ごとに設計できます。形状の自由度も高い。これがカーボンの優位性でした。
対してチタンは、溶接で組む限りチューブという形の制約から逃れられません。液圧成形(ハイドロフォーミング)で肉厚や断面をある程度いじれても、チューブを大幅に別の形へ変えることまではできない。ジオメトリーと肉厚、その程度が設計変数のすべてでした。
3Dプリントは、この制約を外します。剛性が欲しい箇所は厚く積層する、応力が集中して壊れやすい箇所は肉を盛る——といった調整が、造形データ上で自由にできる。カーボンほどではないにせよ、チタンが「チューブのくびき」から解放されたわけです。
3. 溶接という不確実性を減らせる
溶接部はフレームの中で最も繊細な箇所です。そこを工程から省略できることは、品質の安定に直結します。加えて、人の手に依存しないため、同じものを同じ精度で複製できます。
では、なぜ安くならないのか
「3Dプリントなら安くなるのでは」というご質問をよくいただきます。
設備投資が数十億円規模だからです。造形装置そのものに加えて、メンテナンス、運用体制、そして造形データを設計する人員が必要になります。1本あたりの製造コストが下がっても、投資の回収が価格に乗ってきます。
裏を返せば、歩留まりが上がり装置が償却されていけば、3Dプリントは下のグレードへ降りてきます。実際、現時点でもR7.3のBB周りには3Dプリント部品が使われています。
R8C|21万円・リムブレーキ

R8Cの「C」はキャリパー、つまりリムブレーキモデルです。R6・R7.3・R8.1がスルーアクスルのディスクブレーキであるのに対し、R8Cはリムブレーキ規格で継続生産されています。
加工法は液圧成形。チューブごとの肉厚をコントロールしています
チューブ同士は溶接で接合。溶接痕があるタイプです
ケーブルはダウンチューブから内部へ入る内装式。リアブレーキケーブルはトップチューブ右側から入ります
見た目としては、2017〜2020年頃のリムブレーキロードに近い、現代的なシルエットです。「リムブレーキ=旧世代の見た目」ではありません。
ディスクより高い理由
R8Cは21万円。ディスクのR7.3(19万8000円)より高価です。
理由は生産数です。数が出るものは安くでき、数が出ないものは安くできない——メーカーとして避けられない事情になります。リムブレーキかディスクブレーキかという優劣の話ではなく、純粋に製造ロットの問題です。
Hi-Lightとしては、リムブレーキの資産をお持ちの方に選択肢を残すことを優先しています。
R5について:ケーブルフル外装のリムブレーキモデルR5は廃盤となりました。現行のリムブレーキモデルはR8Cです。
R8.1|30万円・3Dプリント本格採用の入口

フレームセット30万円。ここから3Dプリントが本格的に使われはじめます。
見た目でわかる変化
ヘッドチューブから、ダウンチューブ・トップチューブへつながる部分。ここに溶接痕がありません。ツルンとした一体の造形になっています。金属フレームを見慣れた目には、最初かなり違和感があるはずです。
ただし全溶接レスではありません。ダウンチューブ周りなど、力のかかる箇所には溶接が残ります。ここはHi-Light側でも「最も難しい」とされている部分で、確実性を優先して溶接を選んでいます。
ジオメトリー
R8.1から、素直なロードのジオメトリーになります。エンデュランス寄りではなく、レーシーな側。
対応タイヤは32Cまで
グラベル的な使い方には向きません
オールロード用途をお考えの場合は、下のR6・R7.3をおすすめします
R0|40万円・現行のトップグレード

ジオメトリーはR8.1とほぼ同じですが、対応タイヤが28Cになり、よりピュアロード寄りの性格です。30Cは物理的には入る可能性がありますが、クリアランスはかなりタイトになります。
R8.1との造形の違い
3Dプリントの適用範囲が広がっています。
シートクランプが内蔵式(ウス式)。外からクランプが見えません
リアエンドまでツルツルの造形
ヘッドチューブ周辺が砂時計状に絞られたエアロ形状
ダウンチューブ裏側にも造形処理
オールラウンドをベースにエアロ要素を入れた、いま主流の形です。これらはすべて、溶接で組む限り実現できない形状になります。金属でこの形が出せるということ自体が、このモデルの内容です。
R0 Pro|54万円・BB周りの溶接をなくす

R0との違いは、BB部の溶接があるかないか。この一点です。
なぜBBだけ14万円分も違うのか
フレームを完成させる最終工程で、BBにチェーンステー・シートチューブ・ダウンチューブを接合します。この精度が、溶接でないと出しにくい。
溶接であれば、わずかなズレをその場で微調整しながら詰められます。3Dプリントで一体成形する場合、一発で決めなければなりません。造形の向き、サポート材の配置、分割の位置、除去後の仕上げ——変数が多く、精度を出しながら大型部品を造形するのは現時点でもまだ難しい領域です。
装置とソフトウェアの世代がここ1〜2年で更新されて、ようやく可能になった。その難易度が価格差になっています。
なお、R0 Proも完全な一体成形ではありません。分割して造形したものを組んでおり、後ろ三角のシートチューブ接合部などにはわずかに溶接が残ります。
R0とR0 Pro、どちらを選ぶか
正直なところ、組み上げてしまえば見分けはつきません。走行性能で言えばR0で十分に完成しています。
R0 Proは、BB周りの造形にこだわりのある方向けの選択肢とお考えください。予算との兼ね合いで判断していただくのが現実的です。
RA1|110万円・溶接ゼロ、予約販売

カタログ外の特別モデルです。
溶接が一切ありません。 造形装置から出てきた時点でフレームの形をしています。もちろん研磨とバリ取りは必要ですが、接合という工程が存在しません。
これを可能にしているのは、Hi-Lightが導入した大型の造形装置です。本来はさまざまな部品をまとめて造形するために導入されたもので、フレーム1本であればそのまま1回で出力できてしまう。「大は小を兼ねる」の結果として生まれたモデルという側面があります。
予約販売である理由
フレーム1本の造形に相当な時間がかかり、装置の生産計画を占有する
他の部品生産との調整が必要になる
このため、ご注文いただいてすぐお渡しできる性質のものではありません。
110万円という価格は、数十億円規模の装置から生み出す最初のモデルとして設定されたものです。実験的な意味合いの強いモデルですが、溶接が一切ないチタンフレームとしては現時点で最も手の届く価格帯でもあります。
ここで得られた知見は、いずれ8シリーズ以下へ降りてきます。エンドもシートチューブ周りもツルツル、という状態が下のグレードで当たり前になる日は、そう遠くないはずです。
比較表
モデル | フレームセット価格 | ブレーキ | 3Dプリントの範囲 | 溶接痕 | 対応タイヤ |
|---|---|---|---|---|---|
R6 | 138,000円 | ディスク/スルーアクスル | — | あり | オールロード対応 |
R7.3 | 198,000円 | ディスク/スルーアクスル | BB部・ケーブル内装部 | あり | オールロード対応 |
R8C | 210,000円 | リム(キャリパー) | — | あり | — |
R8.1 | 300,000円 | ディスク | ヘッド周りほか | ダウンチューブ周りに残る | 32Cまで |
R0 | 400,000円 | ディスク | ヘッド・エンド・シートクランプ | BB部ほかに残る | 28Cまで |
R0 Pro | 540,000円 | ディスク | BB部を含む大部分 | 後ろ三角の接合部にわずかに残る | 28Cまで |
RA1 | 1,100,000円 | ディスク | フレーム全体 | なし | — |
※ R6・R7.3の詳細はロード編①をご覧ください ※ R9系は現在モデルチェンジの境目にあり、カタログには掲載していません
どのモデルを選ぶか
オールロードとして、太いタイヤも履かせたい → R6(138,000円)/ R7.3(198,000円)
リムブレーキの資産を使い続けたい → R8C(210,000円)
純粋にロードとして走りたい。3Dプリントの造形も見たい → R8.1(300,000円)
現行トップグレードで、造形の完成度を求めたい → R0(400,000円)
BB周りまで溶接をなくしたい → R0 Pro(540,000円)
溶接ゼロの一体成形フレームを所有したい → RA1(1,100,000円・予約販売)
完成車価格をシミュレーションする
フレームセット価格に、コンポーネント・ホイール・ハンドル周りを組み合わせた総額は、上のメニューバーにあるシミュレーターでご確認いただけます。
購入について
納期
海外からの輸入品となるため、通常3〜4週間をいただいています
春節など、中国の工場が長期休暇に入る時期は納期が延びます
RA1は予約販売のため、別途ご案内となります
在庫
ご注文後に在庫切れが判明した場合は、全額返金にて対応いたします。
オプション
チタンフォーク、チタンシートポストなどのオプションは、フレームセット価格に含まれません。別途費用が発生します。
試乗について
日本国内の取扱店にて試乗車をご用意しています。
171WORKS(埼玉・大宮) では、R7.3の1世代前にあたるR7.2の試乗車をご用意しています。試乗可能なモデルは今後も追加予定です。
171WORKSの試乗・完成車相談について(171works)
取扱店を募集しています
Hi-Lightでは日本国内の取扱店を募集しています。詳しくはお問い合わせページよりご連絡ください。
シリーズ記事
ロード編②|R8C・R8.1・R0・RA1(本記事)
グラベル編|G6・G7.2・G9.1・G0・G0 Pro(近日公開)